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2019-05-22

書評『ほめると子どもはダメになる』榎本博明著

こんにちは。
ベビーシッター・個別訪問型保育研究家の参納(さんのう)です。

ここ数年、「叱らない子育て」「ほめる子育て」をよく耳にします。
確かにほめることも大切です。

ほめて育てるって、いいこと??

ほめることで、車の免許の試験の合格率が上がったり、事故率が下がったり。
それは、この本「ほめちぎる教習所」のやる気の育て方

その他にも、ほめることをテーマにした本がたくさん出ています。

これらを読み、子どもに対しても、大人に対しても、ほめるって、とてもいいことなんだ、と強く思うようになっていました。

しかし、ほめると子どもはダメになると出会ったのです。

なんともセンセーショナルなタイトルですよね。

ドキッとしました。
ほめるって、いいこと、と思っているのは、間違いなのでしょうか??

この本は、私の中でたくさんの気づきを与えてくれた、まさにホームラン本です。
大きな気づき3つをご紹介したいと思います。

「ほめる子育て」は、日本人には合わない?

もともと欧米で「ほめる子育て」が推奨されていて、それが日本に入ってきたそうです。
文化の違い、国民性の違いもあるなか、どうして、ここまで「ほめる子育て」が日本に広がったのでしょうか?

「ほめる子育て」「叱らない子育て」が広がった理由

・自分にも子どもにも甘い親に受けた
・実は、ほめているのは楽
・叱ると心の傷になる、トラウマになるというメッセージがメディアで流れている
・「ほめて育てることで自己肯定感を高めること」が必要と考えられている
など

確かに、叱るのって、エネルギーが必要なんですよね。
子どもがやりたいようにさせているのは楽なんです。
ですが、やりたいことをさせる、のは聞こえがいいですが、「放置」であるケースも多々あるのです。

「ほめて育てる」の弊害

1、ストレス耐性が非常に低い
2.自分を振り返る習慣が身につかない
→ミスを気にせず、同じようなミスを繰り返す
3.「頑張ることができない心」を生み出す

やりぬく力などの「非認知能力」が大事と言われている現在、これは、大きな弊害ですよね。

日本と欧米の違い

そもそも、欧米ではこの「ほめる子育て」がうまく機能しているのに、なぜ日本では弊害になりやすいのでしょうか?
ここが、私が目からウロコだと思った一つです。

河合隼雄によると

日本は「母性社会」

母性原理中心で、包含する機能が高い。
つまり、「子どもの気持ち」を中心に動いている

→協調的でやさしい人間が育まれていく

一方、キリスト教社会は、「父性原理」

切断する機能が高く、親子を区別するのが当然だと考えられている
つまり、親が「自分の権威」を示し、有無を言わさず言うことを聞かせる

→強く有能な人間へ鍛えられる

そもそも、権威主義で厳しい欧米では、ほめることが足りなく弊害が出ていたため、「ほめる子育て」が推奨され始めたのです。
一方、日本は、川の字で親子が寝る習慣があるくらい、密接なんです。
江戸時代から、日本人の親は子どもにあまかったそうです。
ちなみに、江戸時代の子育て書には、子どもを甘やかすことへの戒めが目立っていたとか。

もともと甘い親が多い日本において、「ほめる子育て」は、受け入れやすかったのでしょう。

何よりも基本的信頼感が大事

この本では、

自己肯定感、いわゆる自分に自信を持つというのは、ほめるというような小手先の甘い扱いで受け付けられるようなものではないことの証拠と言えないだろうか

と書かれています。

また、

何があっても、親はこちらのことを温かい眼で見守ってくれている。
子どもがそう信じられることが、自己肯定感の基礎となる。

とも書かれていて、ほめることでは自己肯定感がほめることで、育つわけではないことが示されています。

さらに

心の絆ができ、基本的頼感があれば、厳しい叱責も自分のためと信じることができるし、(略)その体験を成長の糧にすることができる。

とも書かれています。

この基本的信頼感は、他者への信頼感と自分への信頼感の2種類あります。
0-2歳の頃に、育てたいものなんです。

私自身、0-2歳の保育を行う保育者向けの研修では、いつもこのことを丁寧に伝えています。
この基本的信頼感は、人生の基礎とも言われ、形成されることで、どんなことにもチャレンジしたり、乗り越えたりすることができるようになると言われています。

いい子アイデンティティ

「いい子だね」という言葉は、あまりにも抽象的でよくない言葉だと言われています。

ですが、この「いい子」という言葉を言われて大人になった日本人には、「(いい子に反するような)みっともないことはできない」という感受性が育ち、己にブレーキをかけているというのです。
これにより、治安がいい国になっているのです。

より、わかりやすいように子どもがいけないことをしたときの叱り方を比較してみましょう。

例えば、子どもが、犬に石を投げたとします。

日本 「いい子だから、やめようね」
→子どもは、「自分はいい子だから、やめなくては」と思う

欧米 「悪い子だ、そんなことはやめなさい」
→こどもは、「自分は悪い。だからやめなければ」と思う

まとめ

この本では、「ほめる」ことがいけない。とは書いてありません。
ほめ方によっては、弊害になることもある、ということです。

また、ほめるだけではいけない、ということです。

日本と欧米の感覚の違いがありましたが、人によっても感覚の違いがあると思います。
ですので、自分は、厳しく叱ってしまうタイプなのか、甘やかしてしまうタイプなのかを知ることで、より子どもたちが世の中で生き抜ける力を育てることができるのではないでしょうか。

みなさんは、どんなタイプでしょうか?

一度、見つめてみるのもいいかもしれません。

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