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2019-04-26

【100人インタビュープロジェクトVol.22】マッチングサイトの先駆者、有限会社ライフラボの森川さん

こんにちは。
ベビーシッター・個別訪問型保育研究家の参納(さんのう)です。

100人インタビュープロジェクト22人目は、
「comorinet(コモリネット)」

「ベビーシッターCRADLE(クレイドル)」

運営する有限会社ライフラボの森川幹浩代表です。

実は、2002年に日本初のベビーシッターのマッチングサイトと言われる「子守熊倶楽部(コアラクラブ)」をオープンされました。

こちらは首都圏向けだったとのことで、2003年全国対応のシステムとして、「ベビーシッターCRADLE(クレイドル)」をオープンされました。
その後、「comorinet(コモリネット)」をオープンされ、現在は、2つのマッチングサイトを運営されています。

マッチングサイトの先駆者の方に、マッチングサイトの今までについても、いろいろと伺えました!

日本で初めてのマッチングサイト「子守熊倶楽部(コアラクラブ)」を立ち上げられた経緯を教えてください。

「勤めていた会社を退職し、何かやりたいと模索していたときに、保育園不足という社会課題を知りました。」

この課題を考えられた際、都会では核家族化し、気軽に預けるところがない、一方、田舎だと近くにおばあちゃんが近くにいる、ということが見えてきたそうです。

そこで、都会にも近くに住んでいるおばあちゃんのような存在が預かってくれるようになるといいのではないか、と考えるようになったそうです。

シッターさんのお宅で預かる家庭保育に力を入れたいと思って、スタートしました。
しかし、年配のおばあちゃんのような人があまりいなくて、シッターさんが子どものお宅で預かる訪問保育が多かったです。」

しかし、現在も「家庭保育」というコンセプトは大切にされていらっしゃいます。

「子守熊倶楽部(コアラクラブ)」は、どのようなシステムだったのですか?

「契約の形態は、保護者とシッターさんの直接契約です。
登録には、面接、心理テストなどもしていました。
保険加入もしておりました。」

今、運営されている「クレイドル」「コモリネット」と違い、マージンをとっていたそうです。
ですが、システム認知が難しく、今の紹介料のみをもらうスタイルにされました。
これにより、認知度が上がり、利用者、シッターともに増えたそうです。

現在、クレイドルとコモリネット、2つを運営されているとのことですが、違いは何ですか?

基本は、同じシステムです。
クレイドルは、間に人が入っていますので、その分、人力の作業があります。

一方、コモリネットは、現代に合わせて、多機能なサイトにしています。
双方、直接やりとすることができます。
また、評価システムもあります。

少しずつ、コモリネットに移行しようと考えていたのですが、クレイドルの利用者が減らず、それぞれのニーズがあるのだろうと、継続しています。」

この2つのマッチングサイトは、利用者がシッターと直接契約が成立したら場合に紹介料を支払うシステムになっています。

紹介料は、
クレイドル 49,800円(税別)
コモリネット 19800円(税別)
だそうです。

初回1回のみの紹介料、というシステムは、信頼できるシッターさんと長くお付き合いしたい方には、とっても利用しやすい仕組みですよね。

2014年に起こった富士見市ベビーシッター事件のときも、マッチングサイトを運営されていらっしゃいましたが、どのような影響がありましたか?

実は、あの事件のあと、登録者、利用者が増えました。
マッチングサイトというものがあるんだ、と認知されたようです。

利用の仕方によってはリスクもありますが、それ以上に現在、求められているサー
ビスだったんだということでしょう。」

確かに、それ以降、ベビーシッターのマッチングサイトが増えましたね。

この事件のあと、厚生労働省に提言をされたそうです。
提言書も、拝見したのですが、ベビーシッターが安心して利用できる社会になるために、地道に尽力してくださったことがわかりました。

今のマッチングサイトが存在し、広がっているのは、こういう活動をしてくださったおかげなんだろう、と感慨深かったです。

シッターが登録するうえでの条件は何ですか?

「登録だけならだれでもOKです。
ただ、以下の条件を設けており、確認がとれると、認証マークを表示する仕組みになっています。」

・身分証確認済
・緊急連絡先有
・自治体届出済
・資格証登録済
・自治体研修済
・損保加入済

ただし、自治体届出については、必ず行ってもらうようにしているそうです。

ちなみに、保険には、シッターさんが各自で入ることとなっています。

個人で保険に入りづらいので、保険加入についてもサポートされていらっしゃいました。
実は、自治体と保険会社でタッグを組んでいただき、自治体へ届け出をした人が有利な条件で損害賠償保険に加入できる仕組みを作ってほしい、と提言されたとのことです。
これは、実現してほしかったな、と思うひとつです。

シッター料の最低金額設定はありますか?

最低金額は、設けていません。
登録したときに、基本保育料は入力してもらうようにしています。
1000円-1500円が一番多いです。
500円の人もいますし、高い人は、4000円という方もいます。」

ここにも、森川さんの想いがありました。

謝礼の仕方が、お金以外のお礼の仕方があってもいいように思っています。
(初回の紹介料のみ、というシステムは)いろんな形を許容できる形だと思います。」

例えば、一人暮らしの女性が、子どもを見るかわりに、夕食をごちそうになる、など。
今のところ、そういう話はないそうですが、それもありだと思われていました。

ちなみに、私が代表を務めさせていただいた「ベビーシッターを考える会」では、立ち上げ当初、資金が少なかったため、会のロゴ、チラシデザインなどに協力してくださったママに、制作物とシッティングを物々交換したことがあります。

お金は、価値を交換するのに一番わかりやすく手軽なツールだと思います。
そのツールを増やすことで、お金にとらわれず、より豊かな生活を送ることも可能なのではないか、と改めて考えさせられました。

売りは、何ですか?

「利用しやすいことです。
また、本当の人間関係が作れるというところがメリットだと考えています。

完全に直接契約なので、保育料のやりとりは、個々でしていただきます。
それによって、家族ぐるみのお付き合いが生まれやすくなっています。

確かに、シッターというお仕事は、おうちに入らせていただくので、とても近い関係性になります。
まるで、家族のように、子どもの成長を喜びあえるんです。
これが、ベビーシッターの仕事の醍醐味のひとつだとも思っています。

いろいろなことを直接やりとりできるのは、お互いの距離感を縮めることができるな、と思います。

何かあった場合は、相互での解決をする必要があると思いますが、万が一の際、どこまで介入したりするのですか?

「相談されれば、相談にのります。
こちらで解決できないところは、自治体、消費者生活センターなどにつなげていきたいと思っています。」

現在のベビーシッター業界をどのようにみていらっしゃいますか?

「個人でベビーシッターを利用する、というのが当たり前の世の中になることが最初の課題だと思います。
そのためにいろんなサービスの形、いろんなチャレンジがあったらいいのではないでしょうか?
そこからベストな形になっていくと思っています。」

確かに、欧米ではベビーシッターを個人で利用するのが当たり前なんですよね。
日本では、まだまだ個人では心配、と思われる方も多いのではないでしょうか?

シェアリングエコノミー、働き方改革の影響で、少しずつ個人でベビーシッターを利用することが当たり前になっていくのではないかと思っています。
その際、個人的には、同じお宅に行っているシッター同士がチームとなれる仕組みがあると、さらにいいな~と思います。

今後、どのような取り組みをされたいですか?

「利用する人を増やしたいです。
利用者が増えると、各シッターさんの評価がたまっていくので、利用者にも便利になっていくと思います。

また、利用者も、そのうち受け入れ側になっていただきたいな、とも思っています。」

子育てを助け合う関係性が繋がっていくのは素敵ですよね。

「インターネットを使われる年配の方も増えてきているので、今後、当初の想いである家庭保育を実現するようにしていきたいです。」

ここでも、森川さんの「家庭保育」への想いが伝わってきました。

まとめ

今回、森川さんのお話を伺い、マッチングサイトの歴史を感じることができました。
また、「家庭保育」という形態に、魅力も感じました。
ファミリーサポートで、提供会員さんのお宅でみてくれる、というのと近いと思います。

私も、家庭的な保育の場が、子どもの家でも、シッターの家でも、どちらでも選べるといいな、と思うのです。
ママが家で家事をしたり、ゆっくりしたりしたいので、子どもと外出してほしい、というご依頼もあります。
この場合、月齢によっては、戸外でずっと過ごすことが厳しい場合もあるのです。
そんなとき、ベビーシッター宅でもOKとなれば、とてもいいですよね。

実際、私が今、伺っているシッター先のこどもを自宅で預かるためには、何が必要なのか、と調べてみました。
すると、継続的に自宅で保育を行うのであれば、認可外保育施設の届け出が必要だとのことでした。
これは、有償、無償に関わらず、保育が行われている実態があれば、保育施設とみなされるからだそうです。

認可を受けずに子供の預かりを行う施設は、「認可外保育施設」にあたります。

◎ 利用料(保育料)が有償か無償かは関係ありません。
◎ 預かり時間が長いか短いかは関係ありません。
◎ 保育者の自宅で行うものも、認可外保育施設に含まれます。
◎ 幼児教育や教育的カリキュラムを目的としたものでも、内容によっては認可外保育施設に含まれます。
※ 認可外保育施設は、いろいろな名称で呼ばれています。
例) ○○託児所、○○保育園、○○保育室、○○ベビールーム、○○ナーサリー  など

(東京都福祉保健局のHPより抜粋)

これは、東京都の場合ですが、自治体により、異なるようです。
もっと、このあたりのことも全国的な実態を知りたいと思いました。

ベビーシッターは、単なる保育ではなく、家族を包括的にサポートする役割も担っています。
施設、保育の考え方の枠に入りきらないことが多々あると感じています。

そのあたり、もっとたくさんの人とお話したいと思います!

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