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2018-05-22

フローレンス駒崎代表との対談

ベビーシッター・個別訪問型保育研究家の参納(さんのう)です。

先月4月9日に訪問型保育のサービスを行っておられる認定NPO法人フローレンスの駒崎代表と対談させていただきました!

ちょっと、ドキドキしましたが、質問に的確にお答えいただき、大変学びが深い時間となりました。

(1)訪問型保育の実際と今後について

Q.訪問型保育を行なっている事業者として感じられることを教えてください。
保育園との比較を中心に制度的な面、保護者のニーズなどを教えてください。

補足1:認定NPO法人フローレンスでは、以下3つの訪問型保育を運営されています。
・病児保育   詳細は、こちら

・(認可)待機児童向け居宅訪問型保育(待機児童レスキュー隊員)  詳細は、こちら

・(認可)障害児向け居宅訪問型保育(障害児訪問保育アニー) 詳細は、こちら

補足2:認可の居宅訪問型保育事業とは、子ども・子育て支援制度で新たに加わった地域型保育給付のひとつ。保育所に通えない障害児、待機児童などを対象としている事業です。

 

日本において、通年保育の受け皿は、認可保育所が中心となっています。
(フランスが、保育ママが中心だったりします)

その認可保育所の種類が、小規模保育所だったり、事業所内保育所だったりバリエーションがあるのです。

認可保育所のような施設が中心となったのには、国が主導で施設を推進してきた歴的背景があります。

しかし、認可保育所だけでは賄えないニーズがあります。例えば病児保育、障害児保育、等。

施設を補完するシステムとして多様なニーズがあるので、そこでベビーシッターが活躍できるのではないでしょうか。

施設か、ベビーシッターか、という対立構造ではなく、お互いを補完し合う構造が重要でしょう。

Q.個人的に認可の居宅訪問型保育のひとつである、待機児童レスキュー隊に注目しております。メリット、デメリットを教えてください。

待機児童レスキュー隊員さんが、子どもの自宅に訪問後、みんなのみらいをつくる保育園初台(認可保育所)へ連れて行き交流保育を行っています。

交流保育が行えること、それ自体がメリットとなっています。交流保育によって、マンツーマンで密に保育しつつ、子どもは子ども中で育つ、という側面も満たすことができます。

しかし、これは、同一法人が両方の運営を行っているからできること。
両方やっていない事業者は実施しにくいことがデメリットです。

今後、全ての認可保育所でこのような受け入れが叶うと良いと思っています。

居宅訪問型保育事業の制度創設にも関わりましたが、通常の保育所からこぼれ落ちた医療的ケアが必要な子どもたち対象でしたが、今では、待機児童にまで対象が広がっています。

東京都では、渋谷区のほか、豊島区、千代田区などで実施されています。

現在の待機児童対策向けの居宅訪問型保育において、1人の保育スタッフに負荷が大きい、もしくは、担当が高頻度で入れ替わることで子どもが落ち着かないという現状があります。

子どもにとって本当に良い居宅訪問型保育事業=認可のベビーシッターを推進していく必要があるでしょう。

居宅訪問型保育が施設と比較して質が低い二次的な仕組みという認知がされては、とてももったいないです。
そのためにも、ベビーシッターにおける最低基準等のルールを作り、プロとしての職業倫理を確立していく必要があるでしょう。

補足1:みんなのみらいをつくる保育園初台とは、認定NPO法人フローレンスが運営する認可保育所。

Q.個人的には、認可の居宅訪問型事業が広がればいいと思っています。今後この事業は、どのように展開されていくでしょうか?

東京都でも、待機児童が解消された0になってきた地域があります。そうすると、既存の施設(保育所など)にも空きが出てきています。

待機児童の受け皿としての期待は今よりも下がっていくでしょう。

とはいえ、新築マンションができたときなど、スポット的に待機児童が発生した場合に、ニーズが出てくるでしょう。そういう場合、小スペースでスピーディに開設できる小規模保育所や居宅訪問型事業で確実に対応できるのではないかでしょうか。

シッターに従事する保育スタッフのプロフェッショナリティを高めていく方向性で考えると、
障害児訪問保育「アニー」のような日常的な医療的ケア保育のニーズは高まっていくと思われます。

補足1:2017年4月1日時点で、認可の居宅訪問型事業者は全国で9か所です。

内閣府HPより)

 

Q.個人的には、認可保育所と同レベルの保育の選択肢のひとつになってほしい、という希望があります。実現するためには、どうしたらいいでしょうか?
(特に0歳児などの乳児に関しては、感染症にかかって重篤化するリスク軽減、愛着形成という意味でも居宅訪問型保育は理にかなっているかと思われます。)

 

0歳児保育を施設で行う以外にも、居宅という手段は有効だと思われます。

それは、より多くのスペース・機能を必要とする0歳児保育における施設整備のコストを考えてもいい部分もあるかと思います。

多様な働き方、多様なニーズを考えると、夜間保育の受け皿が圧倒的に不足しています。

例えば、医療機関、飲食店などで働く保護者など。夜間保育の担い手として、密に寄り添ってくれる居宅訪問型保育事業はとても有効だと思います。

ここに補助を出して保管する仕組みがあると助かる人も増えるでしょう。

認可の居宅訪問型保育は、医療的ケア児の保育、ひとり親等の夜間保育の2パターンを想定しています。後者においては特に認知も受け皿も不足しているのが現状です。

ですが、訪問型保育の活動実績を通じて、訪問保育の不信感を払拭できれば、色々な政策にも反映されていくのではないでしょうか。

(2) ベビーシッターについて

Q.ベビーシッターというネーミングについてどう思われますか?

ベビーシッターという名称には、負の印象、誰でもできる、低スキル、というイメージがあります。

アメリカがよく引き合いに出されますが、アメリカの場合、高校生もやっており、誰でもできるものになっています。

子育て経験のある移民も受け皿になるため、低スキルでも広がりやすいです。

しかし日本の場合、移民の背景はなく、人口減少となっています。訪問保育の専門性を軸に業界を形成していくといいと思います。

そして、そこから広がりとしてのファミサポや預かりあい、という助け合いがあり、そこに専門性がはいることで、保育になるというように業界を形成することが必要でしょう。

 

Q.実際保育所にお迎えに行くと、ファミサポと間違われるなど、まだまだ、ベビーシッターの認知が足りていないと感じています。それについては、どう思われますか?

ファミサポは官製のベビーシッター、民間のベビーシッターサービスに税金が投入され、広義では同じベビーシッターとなるでしょう。

私自身もファミサポを利用していて、朝夕の送迎や子育てのサポートをしてもらっていてとても助かっています。

双方がかけがえのない存在だけれども、日本の場合、制度が施設に寄りすぎている(重要視=優遇されている)ことが問題です。

子育てをしていく中で施設以外のサポートが必要です。子どもが病気になったとき、夜間保育が必要になったとき、お泊りの保育が必要になったときなど。
ベビーシッター的な仕組みの知名度は確かに低いです。

Q.ファミサポとベビーシッターは、同じ訪問型保育をしていますが、名称によって分断されている印象を受けるのですが、なぜ分断が生まれるのでしょうか?

機能としては、同じでしょう。

相互扶助=非営利、という理念から「分断」の意識が生まれてしまうのではないかと思われます。

分断によってノウハウが共有されないのは、大変もったいないです。

共有されることで、訪問型保育のプロフェショナリティ、マナー、職業倫理などが確立されていくでしょう。

Q.シッターが家事を担う、担わない、という側面についてどう考えられますか?

業界をどう発展させていくか?を戦略的に考える必要があると思います。

一つの発展の仕方として、子育ての総合事業者=パートナーというコンセプトもあるでしょう。家事も育児もします、という伴走者のような役割とすることもできるでしょう。

ですが、これはベビーシッターとはかけ離れていくので、別の名称にし、ベビーシッターのリブランディングをする必要だと思います。

Q.実際、総合事業者として活躍している仲間が多いです。具体的には、どうしていくといいでしょうか?

いくつかの発展方法が考えられます。医療的ケア児のプロ、夜間保育のプロ、の方向性、と、子育て全般の支援者(家事や保護者の相談も受ける、等、ゼネラルタイプ)の二軸あるでしょう。

しかし、後者に関しては、既存の制度はないので、マネタイズは課題です。
日本の場合、ニーズはあるし必要だと思います。

高齢者においては地域包括支援システムになっており、ケアマネージャ―がいて適切なプランをオーダーメイドしてくれます。

子育てにおいてはそういうシステムがなく、全部親がやらざるを得ないのが現状です。つまり包括支援がないのです。

包括支援の道先案内人として、「子育て全般の支援者」のベビーシッターが求められるのではないでしょうか。

(3)東京都のベビーシッター代補助について

Q.東京都のベビーシッター補助についてどう考えていらっしゃいますか?

これ自体はベビーシッターを制度的にバックアップする仕組みとして良いとは思います。

ですが、質は担保されるのか?という課題があります。例えばシッターが1日のうち3回交代がある、等。そこをしっかりしていく必要があるでしょう。
また、シッターの労働環境の担保も必要でしょう。

政策的にさまざまな可能性あると思っています。病児保育や夜間保育の施設をつくっていくことにはコスト面で限界があります。

病児保育、夜間のお泊り保育、等のニーズに応えていく制度になっていけば、助かる人も増えるでしょう。

ぜひ成功して多様な受け皿が公的に確保されると良いと思います。

対談を終えて

実は、この対談のとき、ベビーシッターの良さを自分では認識しているものの、いろいろ思い悩んでいる時期でした。

ただ、良さをアピールし、ベビーシッター(訪問保育)が認可の保育所同様の選択肢のひとつにしたい!と思っていました。

そして、認可の居宅訪問型保育が誕生し、東京都でベビーシッター代28万円まで補助するという制度も発表され、ベビーシッター業界に追い風が吹いていると感じていました。

そんななかで、駒崎さんとお話させていただき、ベビーシッター(訪問保育)業界の可能性を再確認できました。

多様な働き方、多様なニーズに応えていける存在になりえるのではないか、そんな気持ちになりました。勇気をもらったように思います。

ただ、実現には、大変な道のりがあると思います。

ですが、「ワンオペ育児」という言葉が生まれるくらい、子育て家族は、さまざまなサポートが必要な状況です。

ベビーシッターを考える会の仲間とともに「ベビーシッターを必要な人が必要なときに使える社会」と目指したいと思います。

ベビーシッターを考える会では、ベビーシッターの良さを伝えるための調査、利用者の声を集める活動をしています。この活動へご支援、ご協力いただければ幸いです。

連絡先:bkksitter@gmail.com

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